研究概要 |
樹脂病に感染した樹木と非感染の樹木の成分を比較するための分析を、ローソンヒノキとヒノキについて行った。 1.ローソンヒノキの材と樹皮成分 樹脂胴枯病ローソンヒノキの材と樹皮成分の分析結果を生かすため、健全木の樹皮と材から、テルペン10種、ステロイド2種、炭素数22,24,26の直鎖脂肪酸メチルエステル3種、フェニルプロパロイド1種を単離した。うち13化合物はこの樹木からはじめて見いだされた。罹病すると抽出物量が4〜5倍に増え、生合成経路のより進んだ構造の化合物に変化していた。健康時ラブダン系やアビエタン系のジテルペンが、罹病するとほとんどトータラン系のものとなっていた。 2.漏脂病ヒノキの材成分 漏脂病に感染したヒノキの材からセスキテルペン11種、ジテルペン4種を単離した。健全な材と比べると、健康時のセスキテルペンに水酸基やカルボニル基が増えた構造をしており、より酸化が進んだ化合物が得られた。ジテルペンにおいても同じように考えられた。 3.ヒノキの樹皮成分の垂直分布(ガスクロマトグラフ法による) 一本の健全なヒノキ木の樹皮からの面積当たりの抽出物量はどの高さでもほぼ一定であった。ジアゾメタンを用い抽出物をメチル化後、ガスクロマトグラフ法で同定と定量を行った。健全木の樹皮では、成分化合物も高さによりほぼ変わらないことを、一方、一本の漏脂病に感染したヒノキの樹皮では、患部やその付近で抽出物量が増加し、そこでは特徴的な化合物の増加を確認した。これらの特徴的な化合物の増加量から病状の進行を把握できると考えた。
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