研究概要 |
森林微生物キノコの担子菌類(木材腐朽菌)には、生理学的にシュウ酸を分泌するものが多い。木材腐朽菌、特に褐色腐朽菌にあってはその高いシュウ酸分泌・集積性のため銅薬剤の不活性化を招致している。そこで、細胞内でのシュウ酸生合成サイトの局在性を解明し腐朽菌のシュウ酸生合成を抑制し、森林資源としての木材の保護に応用する研究開発が重要となる。現在、銅耐性褐色腐朽菌オオウズラタケのシュウ酸合成の鍵酵素であるイソクエン酸リアーゼ(ICL)を単離、精製することに成功しているので、そのタンパク質のアミノ酸配列を明らかにするとこにした。しかし、5‘RACE法によりその全長をコードするcDNAを決定することに成功した。このcDNA断片を鋳型として、3つのDNA断片(塩基対の長さが異なるDNA断片:ICLa,ICLb,ICLc)をPCR法によって調製した。そこで、これらのDNA断片pET32Ek/LICベクターシステム(Novagen)用いて、N末端領域のアミノ酸が決失したポリペプチドを大腸菌(E.coli)BL21(DE3)で大量発現させた。これら3つのポリペプチドの中でICLbだけが抗体調製に利用できることがわかった。白ウサギ(2.5Kg)に週間毎に約1〜2mgの組み換えタンパク質を3回注射し、抗体を調製した。この抗体の金粒子標識のウサギ抗体を用いて電子顕微鏡解析票品を調製した。これとは別に細胞内オルガネラであるミトコンドリアとペルオキシゾームを蔗糖密度勾配遠心分離方によって分画しペルオキシゾームのマーカーであるカタラーゼ反応を利用しペルオキシゾームを確認し、ICL酵素活性はミトコンドリアではなくペルオキシゾーム画分に分布することがわかった。また。免疫電子顕微鏡観察によって標識金粒子はミトコンドリアではなくペルオキシゾームに局在することを確認した。 以上、最終年度では、懸案のICL酵素のCdnaの全長を決定することに成功し、その断片を利用してポリペプタイドを用いて抗体を調製することができた。その結果、免疫電顕による解析から木材腐朽担子菌からグリオキシル酸回路の鍵酵素ICLはペルオキシゾームに局在することを明らかにした。
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