研究概要 |
本研究では低密度で軟質な針葉樹を高温あるいは高温高圧雰囲気下で圧縮して圧密化木材を製造し,その物理的な特性の変化を振動試験,曲げ試験およびねじり試験によって検討した。また,こうした試験結果をもとに,木材素材から著しく特性が変化している圧縮成形木材の力学的性質を決定するための試験法について検討した。 まず,両端自由たわみ振動試験を行った結果,ヤング率は顕著に上昇したが,せん断弾性係数はあまり上昇しなかった。このことは表面における著しい圧密化がヤング率を上昇させたのに対し,内部の圧密化が表層ほどではなく,材料全体のせん断弾性上昇につながらなかったためであると考えられる。また,損失正接は密度の上昇とともに通常低下する傾向があるが,本研究では反対の傾向を示した。このことは圧縮負荷によって発生する材料内部のき裂が原因であると考えられた。 次いで曲げ試験を行った結果,従来の木材素材の曲げ試験法として規格化されている試験体形状では,その形状の影響が非常に強く作用したために真のヤング率の値よりも著しく小さくなった。これは前述したように試験体の表面の高密度化に比べて内部の密度があまり高くならないため,ヤング率がせん断弾性係数に比べて著しく大きくなり,せん断力に起因するたわみの影響が顕著に現れたためであると考えられる。しかし,十分に細長い試験体を使用することによってこうした障害は解決できる可能性が示唆された。また,曲げ試験における非線形開始点や曲げ強さについてはこうした試験体形状の影響はあまり顕著ではなかった。 ねじり試験については,圧縮力の負荷で著しく圧密化されている面とそれとは垂直な面のせん断特性が著しく異なるため,試験体形状をさまざまに工夫しても圧縮力を負荷した表面における破壊を発生させることは困難であった。
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