研究概要 |
本年度は圧縮率をさまざまに変化させて試験体を作製し,JISの木材素材の規格に準じた静的3点曲げ試験およびJASの単板積層材の規格に準じた静的4点曲げ試験を行い,試験法の違いが曲げヤング率や曲げ強さにおよぼす影響について検討した。さらに,I型断面を持つ非対称4点曲げ試験および非対称な切欠きを有する材料の引張試験によりせん断強度を測定した。また,従来ほとんど顧みられなかった木口面に関する力学特性として,半径方向および接線方向のヤング率および木口面のポアソン比とせん断弾性係数を測定し,圧縮率の影響について検討した。これまでと同様に,試験体には材質変動が比較的小さい樹種であるスプルースを使用した。板目面に水蒸気導入のための直径1mmの円孔を一定間隔であけ、高温高圧下で圧縮成形木材を作製した。得られた結果を示すと (1)静的3点曲げ試験と4点曲げ試験から得られた曲げ強さに大きな差は見出せなかった。また,接線方向に負荷を与えた場合と半径方向に負荷を与えた場合で曲げ破壊の様式が異なり,前者では荷重点直下における引張破壊が支配的であったのに対し,後者では中立軸に沿ったせん断破壊が支配的であった。しかし,得られた曲げ強さの値に大きな差はなかった。 (2)2つのせん断試験の結果からは圧縮強度におよぼす圧縮率の影響は顕著ではなかった。 (3)圧縮率の上昇とともに接線方向のヤング率は増加したが,反対に半径方向のヤング率は顕著に減少した。また,木口面のポアソン比も半径方向のヤング率と同様に減少したが,せん断弾性係数は圧縮率に対して極大値を持つような傾向を示した。こうした結果は圧密化の進行とそれに伴う中立軸近傍の損傷の影響が混在していたためであると思われた。 (4)昨年度までに得られた結果および上述した結果から,圧縮成形加工の影響は強度的性質よりも弾性的性質により顕著であることがわかった。 圧縮成形木材の弾性定数におよぼす圧縮率の影響についてまとめたものは雑誌「木材工業」の2006年4月号に掲載予定である。また,曲げ強さやせん断強さに関する部分は"Wood Science and Technology"に,木口面に関する弾性特性に関する部分については"Forest Products Journal"に投稿し,現在審査中である。
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