研究概要 |
近年,木材の機械加工はもちろんのこと,パーティクルボード,MDFなどの木質系難削材料の機械加工における工具の性能向上と長寿命化が強く求められている。このような背景から,筆者らは,長寿命工具の開発を目指して超硬合金母材にダイヤモンド薄膜を形成するダイヤモンドコーティングに着目し,その基礎研究を行ってきた。しかしながら,これまでの研究結果では,ダイヤモンドコーティング工具は,耐摩耗性には優れているが刃先丸みの問題を有し,刃先の鋭利性を改善することが課題で有ることがわかった。本研究では,上記課題を克服する目的から,CVD法によって基板上にダイヤモンドコーティングして製造したダイヤモンド厚膜を超硬合金チップにろう付けし,これを研磨して刃付けを行って,新しい木材切削工具(以下,厚膜ろう付け工具と呼ぶ。)を作製した。作製した厚膜ろう付け工具は,刃先の丸みが従来のダイヤモンドコーティング工具よりも,大幅に改善されて鋭利になり,工具のすくい面および逃げ面ともにかなり平滑になった。さらに,厚膜ろう付け工具との寿命試験を実施し,工具の摩耗特性と切削消費電力の変化を調べた。さらに,寿命試験終了後に両工具の切れ刃のSEM観察を行い,厚膜ろう付け工具は全く摩耗が進展せず,切削消費電力も低い値を維持することを明らかにした。以上の結果より,開発したダイヤモンド厚膜ろう付け工具は,とくに木材の切削において優れた性能を有する長寿命切削工具として期待できる。
|