研究概要 |
ムラサキウニとバフンウニが同所的に分布する仕組みと海中林との相互関係を明らかにするために,和歌山県美浜町日ノ御崎沿岸の海図0mより潮下帯にかけて海底に固定した杭に沿って沖出し20mのラインを張り,ラインを中心に幅2m,合計40m^2の永久トランセクトを実験区とした。隔月毎に1m×1mの方形枠(合計40枠)を置き,枠内に生息するムラサキウニとバフンウニを採集して殻径を測定し,再び元の場所に放流した。また,水深別に50×50cmの方形枠を置いて海藻を採集するとともに,枠毎のアラメの密度を記録した。 大型多年生褐藻のアラメ群落は潮間帯にのみ形成され,幼体の出現は認められなかった。また,1月には,潮間帯で大型多年生褐藻ネジモクが約500g/m^2生育した。潮下帯はピリヒバやフサカニノテなどの紅藻有節サシゴモが優占した。出現したバフンウニは9月に殻径12〜14mmの前年に発生したほぼ単一の年級群から構成された。その密度は,9月から3月にかけて,いずれも40個体/m^2と著しく高く,秋季から春季にかけて,深所の有節サンゴモ群落から浅所のアラメ海中林形成域への明瞭な移動が認められた。この時期は,生殖巣指数(生殖巣重量×100/体重)がピークに達してから急激に下降する成熟期から産卵期に相当すると判断される。 ムラサキウニは9月に殻径16〜20mmの満2歳群が優占し,11月には殻径10mm前後の前年の発生群も認められた。その密度は潮間帯を除いてバフンウニよりも低く,ほぼ10個体/m^2以下で推移し,密度に顕著な季節変化は認められなかった。また,生殖巣指数は5以下で極めて低く推移した。
|