研究概要 |
本年度は網膜桿体細胞の増殖機構に関する研究成果の論文発表と、松果体光受容細胞の増殖機構に関する免疫細胞化学的研究の推進を図り、研究実績は次のように要約される。 1.ニホンウナギの網膜における桿体細胞の増殖機構:シラスウナギ、淡水ウナギおよび降りウナギの網膜桿体細胞の増殖機構について、組織学的並びに免疫細胞化学的に解析した。1)外境界膜付近に一列に並ぶ錐体細胞に対し、外顆粒層を全体を占める桿体細胞の核およびその外節層がウナギの成長および加齢に伴って顕著に増加する。2)淡水ウナギの網膜では、増殖細胞核抗原(PCNA)抗体に対する免疫陽性細胞が外顆粒層のみならず内顆粒層にも多数みられ、桿体前駆細胞が内顆粒層から派生している可能性が高い。本結果より、ニホンウナギの生涯にわたって網膜桿体細胞は増殖し続けことが示唆された(Fisheries Science 69,924-928,2003)。 2.ヒラメの網膜桿体細胞の増殖機構に関する免疫細胞化学的研究:ヒラメの綱膜桿体細胞は変態の頃に出現し、成魚では一列を成す錐体細胞の上に厚い桿体外節層がみられるので、着底以降も増殖し続けるものとみなされた。変態後の養殖稚魚および漁獲成魚の網膜についてPCNA免疫陽性細胞の分布を調べ、桿体細胞の増殖機構の解明を試みた。稚魚では外顆粒層全体に免疫陽性細胞が豊富に分布し、前駆細胞が外顆粒層の基底部から頂上部へ移動して新しい桿体細胞に成ることが示唆された。一方、成魚の網膜では周縁部胚芽帯付近以外PCNA免疫陽性細胞はあまりみられず、水温や栄養等の影響が予想された(Fisheries Science 70,80-86,2004)。 3.ニジマスの松果体における光受容細胞の増殖機構:光受容-メラトニン分泌を行う魚類松果体も網膜の場合と同様に、光受容細胞がさらに新生され続けるのかどうか明らかにするため、約2年令のニジマス松果体についてPCNA免疫陽性細胞の分布を調べた。免疫陽性細胞の核には大きな卵円形や紡錘形あるいは不規則な形のものがみられ、先端膨大部から柄部まで全体にわたって豊富に分布し、松果体上皮の基底部で分裂した前駆細胞が頂上部へ移動してさらに分裂し、あるいは直接光受容細胞に分化することが考えられた。本結果より、成魚の松果体においても光受容細胞は増殖し続けることが示唆された(平成16年度日本水産学会大会、鹿児島大、講演発表)。
|