研究概要 |
日本産ウナギ目魚類は13科約150種を含み、その産卵場所は浅海域から大陸棚斜面域、外洋域まで多様性に富んでいる。その中で水産重要種のハモやマアナゴは近年資源量の減少が顕著にあるにも拘わらず、マアナゴは産卵場すら不明であり、ハモに関しても天然卵や初期生態に関する知見はほとんどなく、資源の管理・培養に不可欠な知見はいまだ得られていない。本研究は九州東岸の日向灘海域でウナギ目卵の採集を行い、採集された卵のミトコンドリアDNA(16SrRNA)の部分塩基配列を決定し、成魚のライブラリーと比較することにより卵の種同定を行い、卵の特徴を明らかにすることを目的とした。 日向灘海域で稚魚ネット(口径1.6m、目合1mm)の各層曳網(5,15,30m)による卵の採集を行った。計171曳網で合計1,215個のウナギ目卵が得られ、それらの卵径、油球の性状、孵化仔魚の黒色素胞、筋節数などの形態的特徴から19タイプに分類された。これらに対してmtDNA解析を行った結果、25種の卵が含まれていたことがわかった。卵の季節的変化をみると、個体数、種数ともに6〜8月の最も多く、9月以降に個体数は減少したが、種数の減少はそれほど急激ではなく、冬季には個体数・種数ともに減少した。卵は表層に少なく、15m層〜30m層で最も多量に出現した。 本研究により以下に示すウナギ目各科卵の特徴が明らかになった。ウツボ科:油球0,1または2個以上、卵径は2.30-5.50mm、ウミヘビ科:油球0,1または2個以上、卵径は1.62-4.40mm、クズアナゴ科:油球0,または2個以上、卵径は1.98-3.24mm、ハモ科:油球多数、卵径は2.00-2.46mm。
|