ヒラメのレンサ球菌症では、原因菌Streptococcus iniaeのホルマリン死菌(FKC)注射ワクチンが感染予防に有効である。FKCで免疫したヒラメをS. iniaeで攻撃した後採取した血清(免疫・攻撃血清)にはヒラメの生体防御能を高める作用があることが分かっている。本研究は、防御能を高める(活性化)因子の本体を突き止め、S. iniaeに対する免疫防御メカニズムを明らかにすることを目的とした。 免疫・攻撃血清中の活性化因子を部分精製したところ、S. iniaeに対する凝集抗体活性のフラクションには防御能活性化が認められなかった。また、マウス抗ヒラメ抗体モノクローナル抗体をリガンドとしたアフィニティークロマトグラブィーによって免疫・攻撃血清からヒラメ抗体を精製し、その防御能活性化作用およびヒラメ腹腔内マクロファージの食作用活性化作用を調べた。その結果、抗体には防御能やマクロファージを活性化する作用およびマクロファージのS. iniae貪食におけるオプソニン作用は認められなかった。これらのことから、S. iniaeに対する免疫防御に抗体は中心的役割を担っていないと考えられた。一方、部分精製の凝集抗体活性以外のフラクション、とくに分子量が100万程度の高分子画分にヒラメの生体防御能活性化作用が認められたことや、免疫・攻撃血清にマクロファージ活性化作用やオプソニン作用が確認されたことから、これら抗体以外の物質がマクロファージを活性化し、かつオプソニンとして働き、ヒラメ体内に侵入したS. iniaeをマクロファージに取り込んで効率よく殺菌処理すると推察された。
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