研究概要 |
機能遺伝子を用いた硫酸還元細菌(SRB)の検出と活性評価法の開発のため,異化的硫酸還元過程の最終段階で働く亜硫酸還元酵素をコードしている遺伝子(dsr)の解析を行った。データベースに登録されている塩基配列をもとにPCRプライマーを作成した。SRBの19種27株からDNAを抽出し,作成したプライマーを用いてPCRを行ったところ,全ての株で予想された長さのPCR産物が得られた。数種の非SRBからはPCR産物の増幅は認められなかった。さらに,河口堆積物および密度成層湖水から抽出したDNAを鋳型にPCRを行い,PCR産物のクローンの塩基配列を決定したところ,全てのクローがdsrであった。これらの結果から,作成したプライマーはSRBのdsrに特異的であることが確認できた。次に,このプライマーを用いた定量的PCR法によるSRBの計数方法の検討を行った。目的とするPCR産物の長さより約20%短い競合DNAを作成した。段階希釈した既知量の競合DNAをPCR反応液に加えて行う競合PCRによってSRB数を推定する方法の開発に成功した。堆積物に既知量のSRB細胞を添加してDNAを抽出し,競合PCRでSRB細菌数を計数したところ,添加したSRB細胞数と競合PCRで検出される細胞数には比例関係が認められた。水試料については,孔径0.2μmのフィルターに細菌を捕集し,堆積物試料と同様にDNAを抽出した。段階的に希釈したSRB細胞をフィルター上に捕集してDNAを抽出し,競合PCRによって細菌数を計数した結果,捕集した細菌数と検出された細菌数に直線関係が認められた。有機物汚濁の進行した湖沼,河口域の堆積物中あるいは水中のSRBを計数したところ,従来の培養計数法で計数されるSRB数よりも数桁高い計数値が得られた。以上の結果から,今回開発した競合PCR法は環境中のSRBを計数する方法として非常に優れていると考えられる。
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