研究概要 |
今年度は、材料には多糖類資源の寒天海藻としてムカデノリを用いた。組織培養培地はPES培地を基本に、これに植物ホルモンとしてオーキシン系の2,4-D、IAA、NAAを、サイトカイニン系のカイネチンを添加した。その濃度は0.01mg/L、0.1mg/L、1mg/Lの3段階とした。藻体はそれぞれ約1mmの長さの切片にして培養に用いた。培養の温度条件は8℃、15℃、20℃とし、日長条件は12時間:12時間の中日条件とし、1)培養による組織形態の変化過程、2)培養条件、3)直立体形成条件、4)基質付着条件等について検討した。 組織を培養すると、各温度条件下で組織の髄糸がまず伸長して、その後分枝して先端細胞で基質に付着する。付着すると先端細胞は分裂して盤状体を形成する。この髄糸先端細胞の分裂と発生様式は、本種の胞子の初期発生と非常に類似しており、所謂、直接盤状型を示した。このとき表層細胞には特別な形態的変化はみられなかった。植物ホルモンは、ホルモン間では有意さはみられなかったが、2,4-Dで高い効果がみられた。髄糸から形成された盤状体を毎秒5-10cmの流速を与えると、直立体の形成がみられた。しかし、流速を与えない条件下では、直立体の形成は殆どみられなかった。一方、組織培養による養殖種苗の大量生産法の確立を基に、1)ムカデノリ藻体、2)髄糸から形成された盤状体の両者をそれぞれホモジェネートしたものを上記の条件下で培養した所、両者共に直立体を形成した。
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