研究概要 |
今年度は、多糖類資源海藻としてムカデノリ属のヒロハノムカデノリ、ヒラムカデ、カタノリ、フダラクの4種を用いた。組織培養培地は昨年の研究結果を基にPES培地を基本にして、これに植物ホルモンのオーキシン系の2,4-D、IAA、NAA、サイトカイニン系のカイネチンとゼアチンを0.01mg/L、0.1mg/L、1mg/Lの濃度で添加した。藻体は3つの部位に分け、それぞれ約1mmの長さの切片にして培養した。15℃、中日条件でこれらを培養し、1)組織の形態変化と発生、2)直立体形成、3)糸状体の長期保存等について検討した。 培養した4種の各部位の組織は何れも先ず、髄細胞の形態が糸状に変化して糸状体を形成した。その後、糸状体は分枝して先端の細胞が基質に付着し、細胞分裂して盤状体を形成した。この髄糸先端細胞の分裂と発生様式は4種とも、胞子の初期発生にみられる直接盤状型という発生過程を示した。植物ホルモンは、糸状体の形成ではオーキシン系の2,4-Dの3濃度で、盤状体の形成にはサイトカイニン系のカイネチンの0.1mg/L、1mg/L濃度で高い効果がみられた。4種の中でもヒロハノムカデノリで効果が顕著だった。本種の場合、盤状体は流速を与えない条件下でも直立体を形成したが、毎秒5-10cmの流速を与えると直立体の形成のみならず生長が良好だった。10℃、低照度の条件下で1年間保存したに糸状体を好適条件に移すと、糸状体は再成長し、直立体を形成した。また、この糸状体をホモジェネートしたものも、同様に糸状体の再生長、盤状体と直立体を形成した。 今年度までの結果から、種苗生産システムの基本条件を明らかにすることができた。
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