研究概要 |
昨年度の結果から所期の目的に好適な種は、ムカデノリ属のヒロハノムカデノリであることがわかった。今年度は本種の種苗の大量生産法と養殖法に重点を置いて研究を進めた。種苗の大量生産法としては糸状体の長期保存条件、長期保存した糸状体の大量培養条件を、養殖方法としては糸状体の種糸付け条件、盤状体形成条件、直立体形成条件を調べた。これらの結果を基に、本種の種苗生産から養殖までのシステム化について検討した。 糸状体の長期保存条件:光量子量は10〜20μmol・m-2・s-1、明暗12時間:12時間の中日、水温10〜15℃、KIN+BAPの濃度0.1μg・ml-1または2,4-Dの濃度0.1μg・ml-1、静置条件下で培養した時に糸状体は成長力を失うことなく保存できた。 長期保存した糸状体の大量培養条件:光量子量は10〜40μmol・m-2・s-1、明暗14時間:12時間の長日、水温20℃、KIN+BAPの濃度1.1μg・ml-1または2,4-Dの濃度1.0μg・ml-1、通気条件下で培養した時に、糸状体は1〜2ヵ月後に3倍以上に増殖し、最も良い結果が得られた。 糸状体の種糸付け条件:光量子量は20〜40μmol・m-2・s-1、明暗12時間:12時間の中日、水温20℃、KINの濃度1.0μg・ml-1、静置の条件下で種糸にしっかりと付着していた。また、同時に糸状体も増殖していた。 盤状体形成条件:光量子量は20〜60μmol・m-2・s-1、明暗10時間:14時間の短日、水温15℃、KINの濃度0.1μg・ml-1、通気の条件下で座の形成が最もよかった。 直立体形成条件:光量子量は20〜60μmol・m-2・s-1、明暗12時間:12時間の中日から明暗14時間:10時間の長日、水温20〜25℃、KINの濃度0.1μg・ml-1、通水の条件下で直立体がよく形成された。 これらの結果から、糸状体の保存は低光量、短日から中日、水低温、止水条件が、増殖と種糸付着は低光量、中日、やや高めの水温、止水条件が、盤状体と直立体の形成は高光量、20〜25℃の条件下にすれば、種苗生産・養殖を最も良い条件下で制御できることがわかった。したがって、これらの条件を目的に応じて組み合わせることにより、多糖資源海藻ヒロハノムカデノリの養殖のシステム化が十分可能であることがわかった。
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