研究概要 |
わが国のシロザケ増殖を過去に振り返って評価するため,遺伝的および生態学的手法を開発・適用した。まず,遺伝的解析に関して,昨年に引き続き茨城,岩手,アラスカの遠く離れたふ化場集団を用いて,ミトコンドリアDNAとマイクロサテライトDNA両方の変異サイトの検索を行った。本年度はND5,6領域および調節領域の分析を行った。その結果、分布の南限集団である茨城県集団は北海道集団と明瞭に異なり、東北北部集団とも相違があることが明らかとなった。過去の鱗を用いたDNA抽出,PCR増幅手法に関しての検討から、2年前の鱗に関しては,特に何もしなくても十分な量・質のDNAが回収されたが、30年程度昔の鱗からは断片化した低分子のDNAしか回収されなかった。30年前のものでは長鎖の増幅は不可能であったものの、100-200塩基対の増幅は可能であった。精製を丁寧に行う以外、DNA抽出に特別な工夫は行わなかった。PCR増幅も標準的なプロトコルを用いたので、サイクル数等の調整によりより効率的な増幅が可能となろう。この点実験を継続中である。 さらに、シロザケの回帰率に大きな影響を及ぼすと考えられる沿岸の海洋環境を評価するために岩手水産技術センター測定の定線海洋環境調査データの解析を行った。定線断面における親潮の勢力をコンター図の親潮領域割合を求め整理した。回帰率との相関は認められなかった。 鱗を用いて安定同位体比の経年変化を炭素、窒素、硫黄に関して検討した。硫黄を除き年度間で変動が認められた。環境要因との関連性を現在解析中である。
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