研究概要 |
我々は,アユ好中球の特徴を明らかにするため,本年度は主にアユ好中球活性酸素産生能を他魚種と比較することを行ってきた。その結果,健康なアユから得た好中球は他魚種(ニジマス,コイ,ウナギ)のものと比べ極めて高い活性酸素産生能を有し,この高い産生能は生長や性成熟(稚魚期〜性成熟期)および起源(人工生産,天然海産)に関係なく一様であった(研究業績1)。また,コイやニジマスでは,細菌感染実験において腎臓(好中球の産生・貯蔵部位)→血中→炎症部位(細菌接種部位)と好中球の移動に伴い,段階的に活性化され活性酸素産生量が増加するが,アユでは健康魚の腎臓中で既に活性化されており,腎臓好中球と炎症部位から得られた好中球の活性酸素産生量に違いは認められなかった(投稿準備中)。このように,アユ好中球は「常に活性化(Priming)された状態にあり,健康時でも高い活性酸素産生能を持つ」という他魚種に無い極めてユニークな性質を持ち,「短命なアユ(通常1年)にとって,常に好中球を活性化し,病原体に即時応答ができるほうが,生体防御の観点から有利ではないか」との仮説が考えられた。そこで現在は研究段階をさらに進め,活性酸素の産生・制御機構に関連する、(1)NADPH酸化酵素の遺伝子クローニングと好中球各分化段階における発現の差,(2)NADPH酸化酵素刺激伝達経路の検討,(3)好中球活性化におよぼす炎症性サイトカインの動態など一連の研究を行っており、コイ,ニジマスや遺伝的背景が明らかなフグやゼブラフィッシュとアユを比較することでアユ好中球の特徴を明らかにしようとしている。
|