ホタテガイ貝殻の新たな有効利用を目指し、貝殻中に含まれる成分による生理活性物質の探索を行ってきた。その結果、貝殻中に含まれる数%の有機成分に皮膚細胞を活性化する成分が含まれることをラット皮膚角化細胞、ヒト皮膚繊維芽細胞を用いて明らかにしてきた。本申請研究においては、in vivo実験としてラツト皮膚を用い、皮膚角化細胞のターンオーバー速度の測定、皮膚のUV照射にともなう皮膚傷害からの回復速度の測定を貝殻抽出成分塗布群、とシャムオペ群で比較検討した。その結果、貝殻抽出成分には皮膚表皮細胞のターンオーバー速度を亢進すること、さらには、紫外線照射によって生じた傷害の回復を顕著に亢進することが明らかになった。また興味深いことに、ラットを用いたin vivo 評価において、その組織切片を作製し形態学的に比較検討を行ったところ、貝殻抽出成分塗布群において上皮の有意な回復効果が認められた。以上の結果は、ホタテガイ貝殻抽出成分中に明らかに皮膚角化細胞活性化因子が存在していることを示した。これらの結果を踏まえ、ホタテガイ貝殻抽出液より、ゲルろ過カラム、硫安分画、イオン交換カラムを用いて活性化因子の単離を試みた。成分を単離することにより、活性の減少が認められ活性化因子を同定するにはいたっていない。今後、さらなる検討を加えていく予定である。 一方、ホタテガイ貝殻抽出成分中に白色脂肪細胞の中性脂肪分解を亢進する因子が存在していることをin vitro実験において明らかにした。この結果を確認するため、ラットにホタテガイ貝殻、粉末を食餌することにより有意に体重減少が生じることを明らかにした。体重減少の原因を明らかにするため今後各脂肪組織の重量変化、各内臓組織の脂肪含量を比較しin vitroにおいて見出した脂肪分解活性の亢進がin vivoにおいても認められるかどうか検討を進めていく予定である。
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