研究概要 |
本年度は,長時間の測定に耐えるマウス舌上皮in situカルシウムイメージング法の確立を目指した.2時間程度まで舌上皮味細胞の生物活性を保つため,灌流液の基本組成,灌流液の酸素濃度,灌流チャンバーの構造,薬液灌流方法およびその速度などを最適化した.甘味物質としてサッカリンナトリウム,苦味物質としてデナトニウム安息香酸塩,うま味物質としてグルタミン酸ナトリウム(MSG)を採用し,それぞれ0.1から30mM程度の濃度範囲で味刺激を与え,その際の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を上述したカルシウムプローブの蛍光として捉えた.得られた画像を開口数0.9程度の対物レンズ,倒立顕微鏡,超高感度ICCDカメラからなる顕微測光システムおよびパーソナルコンピューター上のNIH Imageおよび自作マクロプログラムによって多点について解析し,数値化することが可能となった.なお,マウス舌上皮には茸状乳頭,葉状乳頭,有郭乳頭などに味蕾が存在するが,茸状乳頭には味蕾が1つしかないことが知られており,本研究では2次元測光の利点を生かすために,葉状乳頭および有郭乳頭を観察対象とし,多数の味蕾を対象とする手法を確立した.以上のようにして,甘味,苦味およびうま味に対する味細胞のカルシウム応答を多点同時観察する手法を確立できた.
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