1997年におきたフィンランドでの市販スモーク魚によるボツリヌスE型菌中毒は記憶に新しい。ボツリヌス菌の増殖量と食品中での毒素量は多くの場合相関するが、これまでの諸外国の関連文献調査結果および申請者らの経験では、ボツリヌス菌の増殖がほとんど認められないにもかかわらず、マウスアッセイ毒素試験では陽性である場合も認められている。この原因は謎とされている。なぜなら、ボツリヌス菌の毒素発現に及ぼす環境因子条件についてはほとんど解明されていないからである。 そこで、申請者らは定量PCRによるボツリヌス毒素DNAの定量法(既に申請者らにより確立)を発展させて、m-RNA→DNAの逆転写酵素反応とタックマン定量PCR法を組み合わせたボツリヌス毒素遺伝子のm-RNA定量法を用いて毒素発現条件の詳細を明らかにするために本研究に着手した。初年度は、ボツリヌスE型菌毒素遺伝子のRNAの定量技術の確立を目指し、次の成果を得た。 (1)m-RNAからc-DNAへの逆転写反応に最適なプライマーの選定と性能評価:複数のプライマー再設計と実験の繰り返し良好なプライマーの設計に成功した。 (2)m-RNAの抽出方法の検討:作業効率上、簡便な方法を検討した。 (3)抽出したRNAに(1)で設計したプライマーにより逆転写反応およびcDNAのTaqMan PCR法による定量をおこない、m-RNAの定量性、再現性に関する条件検討を行なった。その結果、m-RNAの定量性、再現性に関する条件検討もほぼ達成することができた 以上の成果は平成12年度当初の計画をほぼ達成したと考えている。
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