研究概要 |
本年度の研究計画に基づき,魚類体表粘質物の収集と体表粘液糖タンパク質の分離精製を行った. (1)体表粘質物の収集と脱脂乾燥物の調製:漁業者に依頼し,有明海に生息する独特の魚類五種(ムツゴロウ,ワラスボ,ハゼクチ,アカシタビラメ,ショウキハゼ)を,生きたまま入手した.魚体を洗浄後ビニール袋に入れ,ただちにフリーザー中で凍結し安楽死させた.フリーザーから取り出し半解凍とした魚体にエタノールを滴下し,体表粘質物をゼリー状に凝固させた.これをそっとかき取り,ブフナー漏斗上でエタノール,アセトンを順次加え吸引ろ過し,脱脂物を得た.減圧下で乾燥し,脱脂乾燥物を調製した. (2)体表粘質物の分離精製:脱脂乾燥物を.トリス塩酸緩衝液中で膨潤させた後,ホモジナイズし,粘液糖タンパク質を溶かしだした.遠心分離により不溶成分を除いた上清にヌクレアーゼを加え,核酸を分解除去した.加熱後遠心分離で不溶物を除き,限外ろ過で濃縮したものをDE-52陰イオン交換クロマトグラフィーにより分画した.分画物の紫外吸収,シアル酸およびヘキソース量を測定し,糖タンパク質の溶出を確認した,得られた糖タンパク質画分を,Sepharose CL-4Bゲルろ過によりさらに分画し,精製糖タンパク質とした. 以上の結果,ハゼクチ,ショウキハゼから得られた粘液糖タンパク質は,これまでに分離したウナギ,ドジョウなどのそれとクロマトグラフィー上でほぼ同じ挙動を示したが,ムツゴロウ,ワラスボ,アカシタビラメの粘液糖タンパク質は,イオン交換,ゲルろ過ともに従来とは明らかに異なる溶出パターンを示した.つまり,これらの魚類に含まれる粘液糖タンパク質は,新規の構造をもっていることが強く示唆された.
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