研究課題
ダイシハーベイン(DH)はミクロネシア連邦ヤップ州産海綿Dysidea herbaceaより得られる興奮性アミノ酸で、既存のアミノ酸には無い特異な構造を持つことから、機能・構造の両面で注目されている。これまでの研究で、DHは海綿内の間充織に存在する直径10μm程度の球状細胞に存在することがわかっている。本研究ではこの球状細胞の機能と起源を多面的に比較・解析した。形態観察:電子顕微鏡、蛍光顕微鏡観察の結果、球状細胞は光合成補助色素フィコエリトリンを含み、3重の細胞壁を持つこと、また核やオルガネラは存在しないことを明らかにした。これらの形態的特徴は藍藻と類似するものであるが、藍藻類に発達するチラコイド膜構造も観察されなかった。またこの細胞のDAPI染色を行ったところ、核の染色は認められなかったものの、分裂途中にある細胞においてのみ蛍光の局在が観察された。この様なきわめて特異な性状を持つ細胞が、本種はもとより海綿の共生生物として報告された例は無い。分子生物学的解析:次に、海綿より球状細胞および共生藍藻Oscillatoria spongeliaeを分離し、それらの細胞を直接鋳型としてリボゾームDNAのPCR解析を行った。その結果、球状細胞のrDNA配列はホストの海綿と類縁のD.avaraより報告されているものと類似するものであった。一方、共生藍藻のrDNAは既報のO.spongeliaeのものとよく一致した。これらの結果は、ダイシハーベインの産生・貯蔵に深く関わっていると考えられるこの細胞は、藍藻と海綿の特徴を具有している可能性を示すものである
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
XI International Symposium on Marine Natural Products. Sorrento, Italy, Proceedings
ページ: O25
ページ: P95
Japanese Journal of Physiology 54(Suppl)
ページ: S13