昨年度は、スクリーン印刷電極により積層型K値計測用バイオセンサを作製し、簡便な測定システムを確立するとともに半導体ガスセンサを用いて腐敗臭と鮮度、生菌数の関係を検討し、バイオセンサとニオイセンサのフュージョン化における基礎的検討を行った。本年度は、昨年開発したスクリーン印刷電極を改良して多チャンネル化し、K値計測用バイオセンサに、更に旨み成分であるイノシン酸、L-グルタミン酸およびグリコーゲンが解糖系によって分解されてできるL-乳酸やグルコースを計測する5チャンネルバイオセンサを作製した。グルコース、乳酸は魚肉中のグリコーゲンが死後、嫌気的解糖系により生成される代謝産物であり、特に乳酸は解糖系最終産物であり、魚の状態、処理方法によって著しく値が異なる。また、イノシン酸、グルタミン酸は旨み成分として知られている。一方、鮮度低下とともに微生物や酵素作用により揮発性酸や揮発性塩基窒素等が増加し、これが腐敗臭となる。そこでニオイセンサとバイオセンサをフュージョン化して、これら6つの指標を簡便に計測するとともに生菌数の情報を付加して多変量解析という統計的手法を用いて総合的に魚の品質を判定した。各種魚種をそれぞれ4℃で貯蔵し各測定に用いた。バイオセンサで測定したイノシン、ヒポキサンチン、イノシン酸含量、グルタミン酸含量、乳酸含量、グルコース含量および3種類の応答感度の異なるニオイセンサ出力値のデータを用いて多変量解析の主成分分析を行ったところ、第1主成分および第2主成分の寄与率はそれぞれ50.67%、29.90%で、この2軸でデータを80.57%集約しているとみなせた。第1主成分は「総合的品質」、第2主成分は細菌に由来する「腐敗」がマイナス方向に、また「生化学的変質」がプラス方向に位置し、魚肉の品質を筋肉中の酵素的分解に起因する劣化と細菌に起因する劣化に判別できることが示唆された。
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