研究概要 |
食品の安全性とその確保対策についての消費者の知識と態度,そして食品購入行動の因果関係を,牛肉を事例として実証的に研究するために,分析モデルの構築を行った.具体的には,BSEおよび国内BSE対策に関する情報,米国産牛肉輸入再開問題に関する情報,肉用牛飼養における抗生物質や遺伝子組み換え飼料,農薬使用飼料投与に関する情報,食品全般の安全性に関わる情報への認知度および意識の背後に潜在する消費者の主観的知識と態度を探る心理学的モデルを構築するとともに,選択実験において原産国とBSE検査の有無,生産履歴情報開示の有無,価格の水準が異なる複数の牛肉間における消費者の選択結果を潜在態度と価格,世帯属性変数で説明するランダム・パラメータ・ロジット(RPL)モデルを構築した. 以上の分析モデルを適用するためのデータは,札幌市清田区在住の消費者を対象に郵送アンケート調査を実施して収集した.回答済み調査票の返送が3月上旬まであったため,現在,回答データの集計作業を行っており,分析モデルの予備的計測をようやく始めたところである. 回答者は全体として,(1)牛肉トレーサビリティの有効性を認める一方で,自ら生産履歴を調べる意思は弱い,(2)全頭検査を高く評価する傾向がみられた.さらに,RPLモデルの推定結果から,生産履歴開示とBSE検査の牛肉属性に対する価値評価は,牛肉の原産国そして回答者ごとに異なることが確認された.それらの理由を明らかにする心理学的分析は次年度に継続して取り組み,牛肉の安全・安心確保に向けたリスク・コミュニケーションのあり方の提言につなげることとした.
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