研究概要 |
食品の安全性とその確保対策についての消費者の態度と食品購入行動の因果関係を,牛肉を事例として実証的に研究した.具体的な内容は次のとおりである. 1.2005年12月に札幌市清田区在住の消費者を対象に実施した郵送アンケート調査の回答データを用いて,食品全般の安全性ならびに国内BSE対策と米国産牛肉輸入再開問題に関する意識の背後にある消費者の潜在的態度を共分散構造分析法により検討し,"国産志向","他者同調","食品安全性に対する慎重な態度"などの潜在態度を抽出した. 2.1.で抽出した潜在態度と価格,世帯属性変数で説明する非補償型のランダム・パラメータ・ロジットモデルを,原産国とBSE検査の有無,価格の水準が異なる複数の牛肉間における被調査者の選択を尋ねる本アンケート中の選択実験質問回答データに適用・計測し,回答者の牛肉選好構造を数量的に解析した.その結果 (1)牛肉の原産国,BSE検査の有無により購入選択対象とする牛肉の種類が異なる複数の回答者セグメントが存在する (2)どのセグメントに回答者が属するかは年齢や所得などの個人属性,潜在態度ならびにBSE対策に対する態度によって部分的に説明される (3)わが国で実施されているBSE全頭検査が国産牛肉に対する信頼と評価を高めている ことが確認された. 3.回答者は全体として,(1)牛肉トレーサビリティの有効性を認める一方で,自ら生産履歴を調べる意思は弱い,(2)全頭検査を高く評価する傾向が,昨年度の調査結果と同様に確認された. 4.今後は,研究期間内に3回実施した郵送アンケート調査の集計結果を比較分析し,各年度の研究実績を踏まえて,牛肉の安全・安心確保に向けたリスク・コミュニケーションのあり方を検討する.
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