今年度は、水質汚染の原因物質である窒素に注目して、酪農経営と畑作経営における環境負荷の程度を評価できる経営計画モデルを作成した。農業に投入された窒素成分の多くは、酸化して硝酸体窒素となり水に溶けて地下水や河川水を汚染し、それを飲用することによってブルーベビーなど人間に害を及ぼすことになる。 そこで、窒素流出の程度が高いといわれている酪農と畑作経営の実態調査を行い、経営内に投入される窒素量と経営外に産出される窒素量を求め、その差を窒素による環境負荷量と設定した。投入要素としては、化学肥料や購入飼料、豆科作物による窒素固定、降雨窒素など、産出要素としては牛乳を初めとする販売農畜産物と揮散、堆肥販売などを取り上げ、それらの窒素成分の経営内外の動態から窒素フローを求めた。経営計画モデルは、これらの窒素フローを取り入れて、線形計画法の単体表を作成した。単体表には、通常の経営計画モデルに加えて、窒素投入と窒素産出、窒素余剰の制約式を設定し、窒素の投入・産出にかかわる要素プロセスには、各窒素成分量を技術係数として用いた。 その結果、購入飼料の多い酪農経営の窒素負荷量は畑作経営の6倍程度であるが、面積が2倍程度違うため、1ha当たりでみると3倍程度になる。また、その1ha当たり窒素負荷量は、硝酸体窒素汚染が問題となっているEUの基準よりも低く、土壌が養分流亡の激しい火山灰土壌ではEUよりも厳しい基準を設定する必要があると考えられる。なおこれらの詳細は、第109回北海道農業経済学会例会で、三宅俊輔・樋口昭則「酪農経営における環境負荷軽減策とその影響分析」と、澤岻直哉・樋口昭則「水質汚染への規制が農業経営に及ぼす影響に関する研究」として報告している。
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