本研究はフード・ビジネスにおける米飯の提供形態の相違がコメ流通に及ぼしている影響を明らかにすることを目的としているが、本年度は個別業者レベルの調査に重点を置き、ヒアリング調査等を行った。その結果、以下のようなことが明らかになった。 フード・ビジネス各社は、不況下での消費者の購買行動の変化から低価格路線を進める一方、有機米使用など高品質化路線も進めており、原料米に求めるニーズをより多様化させている。良食味、低価格という点はともに必要とされるが、商品の種類によって、必要とされる品質、値頃感の水準は異なる。米飯を主とし、原料米の食味等が決定的な意味を持っ商品もあれば、加工を前提とするため、加工に適した特性が原料米に求められる商品もある。さらに、米飯が主体とならないため、原料米の低コスト化が重視される商品など、品質、値頃感の水準は様々である。 また、同じ大手実需者とはいえ一定の品揃えが必要な量販店とは異なり、フード・ビジネス各社は全国の店舗で同一の商品を供給するために、一定の品質のコメを大量に仕入れなければならない。そのため、安定的な数量確保という点が重視され、仕入に際しては事前契約を締結する場合が過半数を占める。 以上のように、フード・ビジネス各社はコメの仕入れにおける価格、数量、品質の安定化を求めるため、コメ流通業者やコメ産地は事前契約に基づき、価格、品質ともに安定したコメを恒常的に納入しなければならない。そのためには集出荷施設の整備や生産者毎の品質管理等が必要であるが、コメ流通業者はともかく、それに対応できるコメ産地は未だ限定されているということが明らかになった。
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