本研究はフード・ビジネスにおける米飯の提供形態の相違がコメ流通に及ぼしている影響を明らかにすることを目的としているが、本年度はフード・ビジネスとコメ産地との関係の調査に重点を置き、補足調査等を行った。その結果、以下のようなことが明らかになった。 フード・ビジネス各社はコメの仕入れにおける価格、数量、品質の安定化を求めるため、コメ流通業者やコメ産地は事前契約に基づき、価格、品質ともに安定したコメを恒常的に納入しなければならない。そのためには集出荷施設の整備や生産者毎の品質管理等が必要であるが、それに対応できるコメ産地は未だ限定されていた。しかし、2004年4月の食糧法改定以降、実需者との安定的な取引を推進する必要に迫られたコメ産地は急速にフード・ビジネス対応型集出荷体制を整えつつある。コメ過剰下での競争的環境の中で、大手フード・ビジネスとの取引は産地が生き残っていくための重要な戦略であるが、大手フード・ビジネスが必要とする数量を供給するには一つの産地では不十分であるため、農協の系統組織が重要な役割を果たしている。また、中間流通を担う大手卸売業者との緊密な連携も必要としている。 チェーン・オペレーションを展開する大手フード・ビジネスにより、全国で同一規格の米飯商品(弁当、加工米飯等)を供給するという形態が伸びたことで、結果的にコメ産地(-農協)-卸売業者-フード・ビジネスという垂直的な結合が強化され、自由化が進展する中でも安定的な流通経路が個別的に形成されつつある。一方、それ以外のところでは過当競争が展開されており、安定的な結合に加われるコメ産地と、フード・ビジネス対応型集出荷体制が整備できず、結合に加われない産地との格差が生じつつあるということが明らかになった。
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