研究課題
研究二年目に当たる本年は、前年の予備的分析の結果、貿易、米転作、農業研究投資の三課題のうち、データ入手可能性からして米転作が取り組みやすいことが分かったことを踏まえ、この課題に集中して、公共選択理論の適用を行い、実態の解明を深めることとした。得られた成果の概要を示せば、以下の通りである。第一に、政治家の行動については、米価運動の行き詰まりと転作配分を巡る利益誘導的な政治家の活動とが、ほぼ期を一にして起こり、両者の代替関係があることが示唆された。特に、平成5年不作を受けた平成6年の復田、翌年平成7年から8年にかけての再びの転作再強化、このことが県間の取り組みの不揃いによる不公平感を深めたので、これ以降、政治家の転作配分を巡る圧力行動は活発化した。第二に、政党の行動については、昭和50年代以降、いわゆる農林族議員は、総合農政派、基本米価派、良質米奨励金派へとわかれ、その対立構図が続いたが、この中で、いわゆる転作傾斜配分を支えた可能性のある政治アクターの一つは、良質米奨励金派である。一方、官僚の計画経済的発想に基づく「地域指標」も、同様に傾斜配分を強く志向していた。どちらが傾斜配分を支えた政治アクターとして強く機能し、それがどう衰退したかは、今後の課題である。第三に、官僚は、特に日本の場合、ニスカネンの予算最大化仮説に従い行動する側面が確かにあるものの、それと同時に、猟官制ではなく幹部にまで組織内で上り詰めていくことができるので、出世動機を背景として、企画の新規性、調整の円滑性で実務能力を示すことが行動動機となる。これにより、転作円滑達成が重視される結果、名目的な配分要素の付加と、その裏での不公平感を背景として要望行動比例的な配分が、行動の合理性を最大化するものとなり、結果的に不満の均平化が図られる可能性が示唆された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Selected Paper prepared for presentation at the American Agricultural Economics Association Annual Meeting
ページ: 1-28