研究課題
本年度は、研究最終年度として、前年度まで得られた、基礎理論め構築と分析手法の確立を基にして、具体的な政策課題に即して研究を進め、政策提言等に結びつくような実践的テーマに応用した。第一に、前年度まで重点的に分析を進めた、第一課題「米転作政策」については、前年度の国政レベルでの利益集団、政党、政治家、官僚のモデル分析を更に一歩進めて、本年度は、特に近年課題となっている新しい米生産調整方式「団体主役システム」のあり方について、公共選択論の視点から解明し、実際の政策提言に役立つ知見を得た。即ち、集落による意思決定や生産者の意向尊重は、一見民主的な手続きであるが、その実、非効率な資源配分をもたらしやすい傾向がある。単純一律配分や、需給即決型のような明確な外形標準的配分が妥当であることがわかった。この成果については、平成17年7月に、アメリカ農業経済学会年次大会で発表し、同国研究者と意見交換を行った。第二に、当初は予定していなかったものの、新たな課題として、食品安全政策の政治過程分析に取り組み、期待を上回る成果が得られた。食品安全政策は、科学的知見に基づく政策であるべき、とされているものの、実際の政治判断では、むしろ不確実性の下で、通常の政策以上に政治的偏向が生じ易いことがわかった。特に、日本の政治過程では、消費者団体において科学的判断ができるスタッフが不足していること、及び政治家のスタッフがアメリカと比較したきわめて貧弱で科学的判断に寄与できる態勢が整っていないことが、政治的偏向を大きくしていることがわかった。第三に、これらと併せて、当初からの課題である「食料貿易と保護政策の形成」、「農業研究投資の政治力学」についても、文献の探索と論点の整理を行った。
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Selected Paper prepared for the presentation at the American Agricultural Economics Association Annual Meeting, 2006
ページ: 1-28
フードシステム研究 12巻・2号
ページ: 39-58