研究概要 |
1.柑橘産地においては,柑橘価格低迷を背景として,産地振興方策の一つとして光センサーが90年代末以降に急速に普及し,それと併せて糖度向上技術としてマルチ栽培面積も拡大している。光センサーとマルチ栽培をセットとした高糖度戦略が柑橘産地の主要な産地戦略となっている。 2.光センサーが先行して実用化・普及したモモでの光センサー先発導入産地での事例調査で,多くの産地で光センサーが普及している普及段階においては,導入初期段階において光センサーの利用によって実現したような高価格が実現できなくなり,いわゆる先駆者利潤が失われていることが明らかになった。 3.柑橘類においても,主要な産地のほとんどで光センサーは導入されており,先駆者利潤は期待できなくなっている。しかも,光センサーの必要性の低いハウスミカン主体の産地や高齢化の進行などにより生産量が急減し,光センサーの利用率が低下している産地など,光センサーを有効に利用することが難しい産地にも導入されている。今後は産地の条件に応じた光センサーの利用が柑橘産地の重要な課題となっている。 4.小売店での柑橘類の販売では,糖度表示は少なく,必ずしも糖度が価格形成の主要な要因とはなっておらず,小売段階では光センサーによる糖度選別が有効なマーケティング手段とはなっていない。 5.今後の柑橘類における光センサー利用の課題として,(1)産地の条件に応じた光センサー導入・利用の意志決定,(2)光センサーによる糖度規格が一般化する中での産地ごとの個性化戦略の確立,(3)糖度規格に関する全国基準の確立,(4)光センサー計測データの生産段階での有効な活用方策の確立,(5)光センサーを導入しない産地との共存方策の構築などが挙げられる。
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