本研究は近代以降における各時代の農学の展開の背後で、それを包括し支えてきた農学の理念や考え方即ち農学思想の展開過程を追求することを課題としている。4年間に、イギリス、ドイツ、オーストラリア、アメリカ合衆国等を順次訪れ、産業革命期を中心にしたイギリスの実際的農学、ドイツにおける特にテーアによる農学の理論的体系化と化学・遺伝・機械等各分野の発展、大農圏の極にあり現在1農家あたり経営規模3000ヘクタールというオーストラリアの大規模農業実態と政策理念、そして現代農業政策をリードするアメリカの考え方等々について、現地において資料を収集し、調査研究を重ねた。他方日本国内での農業・農学展開についても、資料を集め、海外の農学発展との関連等を追求した。之によって世界における農学の発展過程、とりわけ各国や地域の「地域性・場所性」を反映した独自の農業及び農学研究が進んだこと、またその内容と意味が明らかになってきた。これらを統一的な論理の下に、体系的に叙述しなければならないが、いまだ緒に就いたばかりである。 ただこの間、報告書等に記したとおり、関連の研究を深めることが出来たので、これらを足がかりに、今後上記テーマで体系化したいと考えている。その際、時代を動かした人物中心に全体を構成するか、暦年の農学展開を総合的に叙述するかについて、いずれがもっとも適切に研究の狙いを表現できるかは、まだ決心がついていない。今後研究を進める中で、このことを決定し、体系化し、図書として刊行したいと考えている。
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