1、食料の消費動向を主成分分析によって分析すると同時に、所得、価格を説明変数とする需要関数を推定した。分析の結果、微増傾向を続ける品目は肉類、油脂類など、変化しない品目は小麦、魚介類など、また減少傾向を示すものは米、野菜などであり、食料消費全体として現在とほぼ同じ動向の存続することが明らかとなった。さらに、食生活全般でも、個別食料消費の増減率が極めて小さな成熟段階の食生活が展開されると予測される。 2、わが国の食生活の将来に大きな影響を及ぼす社会経済変動を取り上げ、それら変動と食生活の関係を解明した。まず、経済成長と食生活では、戦後における経済発展と食生活変化の関係が明らかになった。ついで、高齢社会への移行と食生活では、加齢と食生活の関係が種々のデータから明らかになった。第3次産業化と食生活、家族構造の変化と食生活などでは主に『国勢調査』、『家計調査』のデータを用いてその関係を明らかにした。 3、わが国の食に関するアンケート調査を実施した。主要な分析結果では、食に対する安全性・健康志向の極めて高いこと、そのためのコスト意識では価格が10%〜20%高くても負担するという回答の多いこと、因子分析の結果では、食の外部化因子、食生活充実因子、健康・安全志向因子などの存在が立証された。今後の食生活の動向に関しては、主食意識の欠如や、米の存在意義の低下、外部化志向の増大傾向などが意識的側面から観察された。 4、わが国の食生活・食料消費の将来動向は、量的側面からは基本的には現在のトレンドを継承しつつも、食生活・食料消費の内容面からは食に対する消費者ニーズの多様化傾向が今後も続くと予想されることや、たゆまない食品産業の発展により多種多様な食材が供給されること、さらに中食・外食産業の発展によっても多様な食生活スタイルが提供されることから、益々多様な食生活が展開していくと予想される。
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