研究概要 |
本研究の目的は次の6点である. 1.国際穀物備蓄政策の食料安全保障および市場安定化効果を把握するためのフレームワークについての理論的整理を行う. 2.食料安全保障の観点から,政府が操作可能な政策変数として,各国の事情に応じて最低限必要となる穀物の供給量,最大備蓄規模,積増し量および放出量を設定した上で,備蓄に関する政府の意思決定モデルを相補性法を利用して構築し,それを不完全競争下の貿易政策シミュレーションモデル(線形・静学体系および非線形・動学体系)に統合する. 3.先進国および発展途上国を含む各国の穀物生産,消費,輸出入および市場価格について,国際備蓄がそれらの水準と変動にいかなる影響を及ぼすか,気象変動にともなう生産量の変動を考慮しつつ,シミュレーション分析を行う. 4.先進国および発展途上国を含む各国の穀物生産,消費,輸出入および市場価格について,国際備蓄の規模および場所の違いがそれらの水準と変動にいかなる影響を及ぼすか,シミュレーション分析を行う. 5.以上の分析結果をもとに,進行中のWTO農業交渉における各国提案を踏まえつつ,わが国が提案している国際穀物備蓄構想の有効性と今後の展開方向について考察する. そして,本年度における研究の概要をまとめると,以下のとおりである. 1.国際穀物備蓄政策の食料安全保障および市場安定化効果を評価するフレームワークの理論的整理を行い,関連する研究のレビューを行った.特に,不作時の輸出規制による穀物価格変動に対する備蓄放出効果の理論的分析を中心に据えた. 2.備蓄に関する政府の意思決定モデルを構築した上で,それを不完全競争下の貿易政策シミュレーションモデルに統合し,シミュレーション分析に必要な計算プログラムとデータセットを作成した.
|