研究概要 |
本研究の目的は,国際穀物備蓄政策の有効性を,特に食料安全保障および市場価格の安定化の観点から把握するための理論的・実証的フレームワークを構築し,それらを用いたシミュレーション分析によって,国際穀物備蓄政策の有効性の具体的な検証を行うことである. 平成16年度に実施した研究は,以下のとおりである. 1.国際穀物備蓄政策の食料安全保障および市場安定化効果を把握するためのフレームワークについての理論的整理を行った. 2.食料安全保障の観点から,各国の事情に応じて最低限必要となる穀物の供給量,最大備蓄規模,積増し量および放出量を政府が操作可能な政策変数として設定し,備蓄に関する政府の意思決定モデルを構築した. 3.相補性法を利用して,備蓄に関する政府の意思決定モデルを不完全競争下の国際貿易空間均衡モデルに統合し,国際備蓄の多地域間シミュレーション分析法を開発した. 4.気象変動にともなう生産量の変動を考慮しつつ,国際備蓄の多地域間シミュレーション分析を行い,国際備蓄が各国の穀物生産,消費,輸出入,市場価格の水準および変動に与える影響を具体的に計測した. 5.以上の分析結果をもとに,進行中のWTO農業交渉における各国提案を踏まえつつ,わが国が提案している国際穀物備蓄構想の有効性と今後の展開方向について考察した.
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