世界のサケ養殖業においては近年更なるアグリビジネス化の進展が見られている。特定企業群による世界市場に対する供給面での寡占体制は強まりつつある。生産は過剰傾向を強めており、低価格環境下においては脱退する企業も見られ始めた。サケ養殖業におけるアグリビジネス化の進展は転機を迎えており、厳しい経済環境において更なる寡占化と有力企業支配力の強化が予想される状況にある。アラスカの底魚漁業においても資本による寡占化傾向が見られる。スリミ生産は原料供給から最終商品形態までの一貫生産を行う企業が多く、垂直統合が進んだ産業構造となっている。また白身魚は冷凍切身原料として欧米諸国の消費市場において重要であるが、これら地域における冷凍食品業界は寡占化が進んでおり、漁業サイドとの取引関係が大型化かつ強化されつつある。しかし南米等におけるメルルーサなどの白身魚を漁獲する底魚漁業と強い競合関係にあり、寡占的地位を得るほどではないことがわかった。また中国山東省青島においてスケトウダラ加工において世界市場に対し寡占的な供給力を有する企業群が成立してきていることが明らかになった。安価で安定したスケトウダラ資源を原料として利用し、安い労働賃金の中国の労働力を用いて加工製品化することで、世界市場において高い競争力を持つ商品作りに成功している。中国のウナギ養殖業においてもアグリビジネス的展開が見られた。ここでは華僑資本が中心となり、潤沢なシラスウナギの供給力、温暖な気候条件、そして安価な労働力を最大限に生かせる商品形態である蒲焼き高次加工品に特化することで日本市場における強い競争力を獲得している。以上のように世界市場に対応した水産食品生産部門においてはいずれもアグリビジネス的展開が見られ、生産要素の多国籍的結合が見られる。今後WTO体制の確立とともに、こうした国際的分業体制は効率性を高め、より強固な体制となっていくことが考えられよう。
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