研究課題/領域番号 |
15580201
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小林 宏至 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70081560)
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研究分担者 |
大西 敏夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教授 (90233212)
藤田 武弘 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (70244663)
樽本 祐助 農業, 生物系特定産業技術研究機構・九州沖縄農業研究センター, 主任研究員 (10355670)
吉岡 徹 酪農学園大学, 酪農学部, 講師 (90405663)
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キーワード | 酪農・乳業 / 都市(型)酪農 / 食品産業副産物の飼料的利用(粕酪農) / 畜産と耕種農業との連携 / 家畜排泄物(糞尿)処理と肥料的利用 / 乳価と牛乳価格 / 低温殺菌牛乳と超高温殺菌牛乳 / 用途別供給と乳価 |
研究概要 |
1.牛乳の市場縮小と価格下落傾向のなか、大手乳業メーカーは「プレミア」牛乳の定着・拡大をめざし、新商品の開発と競争のただ中にある。中小乳業メーカーのなかには(1)「低温殺菌」牛乳を主力とし、(2)細菌数、体細胞数等の生乳品質管理、(3)飼料の特定、(4)産地の特定、などを組み合わせた「地域ブランド」牛乳づくりがみられるが、一部を除き、「プレミア」牛乳が定着したとは言い難い。 2.大阪酪農の構造的特徴の1つは牧草・飼料作物を作付け「なし」の酪農経営が74.4%を占め、1ha未満を含めると酪農経営数の83.7%を占める。牧草・飼料作物畑の欠落を補ってきたのは、ビール粕・豆腐粕(オカラ)等の有力な飼料源を都市に求めてきたところにある。ビール粕の飼料化はビール工場の手で実用化されている。しかし、オカラの飼料的利用は大阪府下酪農家数の3分の1に減少し、府下産出量の28.6%の利用率に過ぎない。都市型酪農を持続可能とした歴史的特質は大幅に後退しつつあり、オカラは産業廃棄物として焼却処分され、そこに畜産環境問題が追い打ちをかけている。 3.大阪府豆腐・油揚げ商工組合(組合員数:304名、組織率:33%)はアメリカ産「ノンGM大豆」等を直輸入し、組合員に供給している。「安全・安心」にと消費者がもとめる「ノンGM大豆」のうち、豆腐・油揚げ等生産の副産物(オカラ)の約7割強が産業廃棄物として有料焼却処分されている。 4.大阪酪農においてオカラ利用が激減した背景には(1)乳業メーカーから「大豆臭」との生乳クレーム(授乳拒否)が発生したこと、(2)オカラは水分85%で、夏場には腐敗し易く、飼料的需給調整が難しいこと、(3)現行の高泌乳量維持にはオカラだけでは賄いきれないこと、などが挙げられる。うち最大の課題は(2)であるが、家畜の飼料化には保蔵技術を講じる必要があるということに他ならない。一般的にはサイレージ等でなじみの「乳酸発酵」が考えられるが、オカラは水分85%がネックで、これに代わりパン酵母を利用する「酵母発酵」(酵母菌+グルコース)が有力との研究成果が注目される。しかも酵母発酵のオカラは、香り・嗜好性・乳質・乳房炎予防に「良」との指摘もあり、特に体細胞数が2極化の傾向を示す大阪酪農(全国酪農調査)にとって乳質改善のための有力な検討課題といえる。 5.府下乳業メーカー直営工場の殺菌方式の1つに採用されて久しい水蒸気殺菌方式(インヒュージョン方式)による牛乳の「味」の吟味とあわせて、上の諸点の有機的結合をともなう総合的・組織的検討は大都市における「プレミア」牛乳創出の方向性とも関わって注目される。
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