研究成果は3つのジャンルからなる。第1は、『近現代日本の農村』に集約される研究である。この著作では近現代日本における集落と町村の歴史的展開を概観した。講演記録「明治の地方富豪と道義」は明治期の地方富豪である大地主と地域つまり集落と町村とのかかわりを複数の事例により明らかにしたものである。第2は、京都府美山町を事例とした「平成の市町村合併」にかんする一連の調査研究である。これは共著『市町村合併の幻想』と雑誌論文2本にとりまとめた。これらの研究では町村が地域農業や村おこし、住民自治に与える影響の検証を通して、村おこしの展開と行政との関係ないし集落や「昭和の大合併」以前の行政村である旧村とのかかわりや、村おこしの新たな展開と住民自治や女性の社会参加など農村社会構造の変化、主体形成とのかかわり等を解明した。また美山町の現状を踏まえ農村社会史研究の課題について方法的な提言も行なった。第3は、昭和恐慌期以降の農事実行組合と集落との関係にかんする研究である。この点は詳細な解説を付した上で農事実行組合の活動日誌を事例紹介したが、2004年度に計画している農事実行組合の政策と集落・町村にかんする本格的論文作成の前提作業となるものである。その他群馬県、京都府、山口県、鳥取県等の調査を実施するとともに、集落史、旧村史、農事実行組合関係の文献・統計・資料、集落センサス、町村長の自伝・回想録等を中心に系統的に関連資料・文献の収集を行なった。
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