3年間の研究の成果は、大きく次の4点にまとめられる。 第1は、近現代日本の村落に関する研究をサーベイし、研究の到達点を確認する一方、今後の村落研究の進展につなげることを目的として、日本農業史学会のシンポジウム・「近現代日本の村落をめぐって」を企画し、その中で「近現代の政府と町村と集落」とのテーマで問題提起的な報告を行なった。 第2は、農家小組合と集落(むら)の関係に関する研究である。群馬県北橘村を事例として、昭和恐慌期以降の農事実行組合の活動日誌を詳細な解説を付して紹介した。また、その研究を踏まえて、「農家小組合の政策と展開」では、農家小組合を一般的に分析し、農家小組合と集落の関係を解明した。 第3は、町村の行政と集落の関係に関する研究である。京都府旧雲原村の村長西原亀三の思想と活動を通して、昭和恐慌による同村の変化、村役場と集落との関係、村長や行政村の役割の変化を解明した。また、昭和30年代の町村長のありようを明らかにする一歩として、京都府園部町で町長を務めた野中広務にインタビューを行ない、その記録を詳細な解説を加え発表した。 第4は、京都府美山町等を事例とした現状の「平成の市町村合併」に関する一連の調査研究である。これらの研究では町村の行政が地域農業や村おこし、住民自治に与える影響の検証を通して、村おこしの展開と「昭和の大合併」以前の行政村である旧村、または集落との関わりや、村おこしの新たな展開と住民自治あるいは女性の社会参加など農村社会構造の変化、主体形成との関わり等を解明した。また美山町の現状を踏まえ農村社会史研究の課題について方法的な提言も行なった。
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