研究概要 |
(1)モデルの精度,適用性の検討 昨年度に構築したモデルをもとに、地区別データをプーリングして水田賃貸借に関する確率的選択モデルを推定する手法、並びに農家の心理的、社会的要因を考慮してモデルを推定する手法を考案するとともに、ブートストラップ法によりモデルの予測精度を明らかにし、本研究で考案した確率的選択モデルが日本の水田賃貸借の分析においで適用可能であることを示した。 (2)担い手農家への農地利用集積に及ぼす影響の定量的評価 推定したモデルを用いて、圃場整備実施、米価や労賃等の他の経済要因の変化,中山間等の地域特性の変化,さらには、農家の農地所有に対する心理的変化について,均衡地代と賃貸借合意水準の変化をシミュレーション分析により分析した。その結果、(1)圃場整備の実施は、水田地代の大幅な上昇をもたらすとともに、賃貸借の合意形成を進めて農地利用集積を促進すること、(2)平均経営規摸が大きい東北、関東、北陸では、圃場整備の効果が地代の上昇として表れやすいのに対し、東海、近畿、中四国では、地代の上昇も生じるものの、農地利用集積の促進面で効果が発現しやすいこと、(3)米価の低下や賃金の上昇は、上記のような地代や農地利用集積を通じた圃場整備の効果を減少させること、(4)都市近郊では、圃場整備の効果が地代上昇として発現する傾向が強いのに対し、中山間地帯では、地代上昇よりは農地利用集積の促進面で整備効果が発現する傾向が強いこと、さらに、(5)農家の心理的忌避傾向や農地制度等により水田賃貸借における総経済余剰の15%の減少が生じていること等、が明らかとなった。 (3)成果の公表 分析結果を,国内の学会大会及び海外の国際学会等の場で発表し、他の研究者との意見交換を行った。また、本年度の研究成果をまとめて『Japanese Journal of Rural Economics』『Paddy and Water Environment』等の英文誌に論文として公表するとともに、農業工学研究所成果情報に掲載し、研究成果の普及を行った。
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