研究概要 |
サブテーマ1 「農業用取水堰湛水部への懸濁有機物の流入負荷量および有機物収支の実測」 電磁流速計を用いた河川流量の詳細観測および現地係留式の濁度計を用いて,平水時に湛水部へ流入・流出する懸濁有機物量の経日変化を実測し,その収支を捉えることで種々の流量条件下で河床に一時的に沈降堆積する有機物量を求めた.さらに河床における有機物分解速度に関する既往の知見を用いて,湛水部における有機物の収支を推定した. 結果を概括すると,湛水部に流入した懸濁物全体の約45%が河床に沈降・堆積し,残りは堰をそのまま越えて下流へと流れる.堆積した懸濁物の中の約26%は有機物で占められており,さらにこの約1/3が河床における好気的分解によって可溶化し河床から除去される.平常時の状況と見なされる比較的低濁度下(SS濃度3.09mg/L, VSS濃度2.64mg/L)では,有機物の日堆積量は河床での好気的分解量とほぼ等しいと推定され,取水堰湛水部の河川自浄作用における役割は決して小さくないことがわかった. サブテーマ2 「砂礫堆地下における接触酸化作用による溶存有機物の好気的分解量の定量化」 製紙排水の負荷により有機汚濁の進行した河川水の水質を,河道内に形成された砂礫堆の自然浄化機能を利用して改善する可能性を検討するために現地実験を行った.砂礫堆上での河川水質の変化過程,砂礫堆地下への河川水の浸透状況,地下水の水質特性を実測した.さらにろ過した汚濁河川水を砂礫層へ強制的に浸透させ,溶存態有機物の好気的分解過程を化学反応論により考察し,現状での砂礫堆の水質浄化能の定量化を試みた. 砂礫堆への浸透水のBOD値が10mg/L程度と高濃度であるために,砂礫堆のごく一部が浄化に機能しているに過ぎないが,この領域内では好気的分解作用による有機物除去が進行しており,8mg/Lの溶存酸素を消費しながら約60%の溶存態有機炭素が炭酸ガスへと変化していることが明らかになった.
|