研究概要 |
本研究は乳牛糞尿に有機性廃棄物を添加する混合メタン発酵において、有機性廃棄物添加がメタン発酵に与える影響を中温発酵(35℃)と高温発酵(55℃)について検討すると同時に、メタン発酵が肥料成分へ与える影響を明らかにすることを目的とした。発酵実験は乳牛糞尿のみと乳牛糞尿に有機性廃棄物を添加した原料を用い、水理学的滞留日数を20日とし、連日投入を行った。発酵温度は中温発酵(35℃)と高温発酵(55℃)とした。 55℃の高温発酵の方が35℃の中温発酵よりもバイオガス生成量、メタン濃度ともに立ち上がりが早かった。また、55℃発酵では乳牛糞尿のみよりも有機性廃棄物を添加することにより、約2.5倍の大幅なバイオガス生成量の増加が認められ、メタン濃度もやや高い値を示したが、35℃発酵では投入負荷が原因と思われる発酵阻害が起こった。 メタン発酵処理は、肥料成分の流出が少なく、発酵による減少もほとんどなく、また、多くは抽出態で存在していた。乳午糞尿中の有機態窒素は発酵により無機化し、アンモニア態窒素量が増加した。また、有機性廃棄物の添加により、アンモニア態窒素の増加量は大幅こ大きくなった。乳牛糞尿に有機性廃棄物を添加し、発酵させることで、土壊に吸着保持されやすいアンモニア態窒素が大幅に増加し、肥料としての価値が高まることがわかった。 さらに乳牛糞尿と有機性廃棄物の混合メタン発酵消化液の土壊中での窒素形態の変化と,秋蒔き小麦への施用が収量に及ぼす影響を検討した.インキュベーションテストの結果,メタン発酵消化液中のアンモニア態窒素は約4週間でほぼ全量が硝酸態窒素に変化した.また,メタン発酵消化液からの有機態窒素の無機化による無機態窒素量の増加率は約15%であった.メタン発酵消化液と化学肥料を窒素量換算で同量施用した場合,小麦の収量に有意差はなく,子実成分もほとんど同じであり,粗タンパク含有率も良質の範囲であった.
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