研究概要 |
農作業は単調な機械操作の繰り返しにより遂行されることが多く,このため精神集中度が低下し,判断能力低下による事故が多発している。このようなヒューマン・エラーが原因した農作業事故を未然に防ぐ方策として,精神医療の分野で研究されている指尖脈波のカオス解析処理法を利用して,作業のし易さを考えた新たな耳朶脈波による「精神心理状態診断システム」を試作し,その実証のための基礎研究を行った。得られた研究成果の概要は次ようである。 1.「精神心理状態診断システム」の試作(山下,鶴崎,有馬,猪之奥) (1)発光ダイオードとフォトトランジスタから構成されるクリップ形の耳朶脈波検出センサ,脈波信号を送受信するAD変換器内蔵のテレメータをそれぞれ試作した。 (2)既製のカオス解析ソフトを用い,短時間(10秒)毎,及び最長10分間連続データ表示,脈波,アトラクタ,リアプノフ指数表示ができるように改良した。 2.システム検証のための室内及び野外実験(山下,鶴崎,有馬,猪之奥) (1)2台のカオス解析システムを用い,同一被験者が同一作業を同時に行ったときの指尖及び耳朶脈波を測定し,両者の相違について検討した結果,耳朶脈波の方が精神集中度を明確に表すことを確認した。 (2)精神集中度が要求される静的作業として,ビーズ摘み作業,穴入れテスト,計算テストを行った結果,安静時に対して作業時では,アトラクタが変形し,リアプノフ指数が増大することから,これらが作業者の精神心理状態把握に有効であることを確認した。 (3)動的作業として,刈払機による塀際作業,乗用型草刈り機による傾斜草地における周回走行及び傾斜転倒台による心的負荷作業を行った結果,塀際作業ではリアプノフ指数が刈刃回転速度6000rpmで約3.5,8000rpmで4.7と大きくなること,傾斜10°では緊張度が少ないが,15°以上では精神集中度の増すことが具体的数値で示すことができた。
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