研究概要 |
自脱コンバインによる収穫作業では,作物条件,圃場条件や,機械条件によって穀粒や藁の流量が逐次変化している.穀粒損失や夾雑物混入の低減を図るため,オペレータはこれらの状況を判断し,経験に基づいて唐箕ファンの風速を変更するなどの対応行っている.したがって,外的な各種条件の変化に対し,最適な選別部の状態を制御によって常に実現維持することが重要である. 本研究は,自脱コンバインにおける選別性能向上を目的として,選別風を受ける穀粒の力学的挙動特性に基づいた単一の穀粒および穀粒層の飛行に関する数値シミュレーションと,選別風の可視化実験および数値実験から,穀粒と選別風の力学的な特性解明とこれらのモデル構築を行ったものである. まず,穀粒に作用する抗力,揚力,重力および浮力の釣り合いと,実験的に求めた穀粒の抗力係数・揚力係数から,選別風を受ける単一穀粒の飛行モデルを構築した.また,拡散力および連続の式に基づく選別風の速度増加を考慮して,流下する穀粒層の飛散運動にも拡張した.これらの適用性を検討した結果,本モデルは単一穀粒および穀粒層の飛行軌跡の実測値とよい一致を示し,選別部の設計検討に有用であることを示した. つぎに,選別風の風速ベクトルの分布計測を可能にするために,高速度カメラを用いた粒子画像流速測定法(PIV)による可視化を試みた.また,流体力学分野で用いられる有限体積法(FVM)を空気流に適用して,選別用唐箕内部における選別風の数値解析を行った.熱線風速計を使った代表点での測定値と比較した結果,PIVおよびFVMによる再現性は極めて高く,設計検討に資する情報を得るために有用な手法であることを示した.
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