本研究では、夏期に有明海底層部で発生する貧酸素水塊を抑制のために、有明海が持つ自然エネルギーを利用した、負圧利用型海水交換装置とスクリューを利用した海水交換装置を開発した。(1)負圧を利用した海水交換装置の模型実験では、直径0.2m、0.3m、0.4mのパイプを用いた。管内流速は、パイプ上端の接近流速が2.6cm/s以上で発生が確認された。また、管内流速のパイプの太さによる変化は小さかった。(2)負圧利用の現地での適用実験は、直径0.6m、長さ5mの土木用暗渠配水管を用い、管の上端と下端及び管内に電磁流速計を装着し、観測用鋼管に固定して実験をおこなった。期間は平成16年1月10日〜1月30日までと平成16年8月16日から観測を開始したが、2回目は台風15号によって、装置が破壊され観測が続けられなくなった。1回目の現地調査から、上端の接近流速の最大値は38.2cm/s、管内流速の最大値は下方方向に35.4cm/sであったが両者は時間的に一致していない。管内流速と管上端の接近流速との関係よりも管内流速と有義波高との相関の方が大きく関わることが明らかとなった。これは新しい知見であり、今後の詳細な現地調査が必要である。(3)スクリューによる海水交換技術の開発実験として、高さ0.8m、上部の水車の直径が0.3m、下部の水車の直径が0.1mとして、その両者をシャフトで連結し、表層の流れを底層に伝達できる装置を開発した。農業用水路での実験の結果、上部の水車は、0.5m/sで回転し始めるように設計したが結果では、0.3m/sで回転を始めた。これによって下部の水車が回転し、18m^3/hの底層の流体が移動する結果を得た。現場では、直径1mの上部水車に対して、下部水車が0.5mの場合、表層に0.3m/sの流れがあれば、約100m^3/hの底層の流体を移動させることが期待できる。
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