ルーメン内培養不能・機能性細菌群の探索と培養化へのチャレンジ

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15580231
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 小林 泰男 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (50153648)
• キーワード: ルーメン / 細菌 / 培養不能 / PCR / 繊維分解 / ライブラリー / 16SrDNA / プライマー

研究概要

マメ科およびイネ科牧草片(アルファルファとオーチャードグラス茎部)をナイロンバックに封入後、ひつじルーメン内に浸漬し、短時間に植物片上に優先して付着するルーメン菌群を植物片とともに回収した。これらから総DNAを抽出し、細菌の16SrDNAの共通配列からデザインしたPCRプライマーで付着菌群の16SrDNAライブラリーを作成した。2つのライブラリーの構成員(個々の付着菌)を明らかにすべく、両ライブラリーから合計92クローンのDNA配列を解読した。データベース上の既知塩基配列と比較したところ、既知菌との塩基配列相同性が97%以上であったクローンは21クローン(22.8%)であった。そのうち17クローンはButyrivibrio fibrisolvensなどの菌種に属しており、これらの細菌が繊維分解に関与していることを明示した。一方、71クローン(77.2%)は既知菌との相同性が96%以下であり、そのうち39クローン(42.4%)は90%以下の相同性であった。この結果から繊維分解に関与する細菌の多くが未知の細菌で占められていることを明らかにした。これらのうちアルファルファ付着菌群由来の未同定クローン群を標的としたプライマーをデザインし、この未知菌群の動態をPCRで追跡した。これら未知菌群のPCR物は粗飼料多給ひつじのルーメン内容から抽出したDNAを鋳型とした場合、増幅バンド強度が強くなった。すなわち本未知菌群は、繊維分解に関与している細菌群である可能性が高いことを示した。

研究成果

• [文献書誌] Ichimura, Y.: "Seasonal variation in ingested feeds, fermentation characteristics and microbes in the rumen of wild sika deer in the Shiretoko peninsula"Ecological Research. (印刷中).
• [文献書誌] Kobayashi, Y.: "Molecular detection of verotoxigenic Escherichia coli from animal faces for screening VTEC-shedders"Asian-American Journal of Animal Sciences. 17. 423-427 (2004)
• [文献書誌] Koike, S.: "Phylogenetic analysis of fiber-associated rumen bacterial community and PCR detection of uncultured bacteria"FEMS Microbiology Letters. 229. 23-30 (2003)
• [文献書誌] Kobayashi, Y.: "Recombinant rumen bacteria : problems and opportunities"Nutrition Abstracts and Reviews. 73. 51-59 (2003)
• [文献書誌] Kobayashi, Y.: "Expression and expert of a Ruminococcusalbus cellulase in Butyrivibrio fibrisolvens through the use of an alternative gene promoter and signal sequence"Canadian Journal of Microbiology. 49. 375-382 (2003)
• [文献書誌] Koike, S.: "Kinetics of in sacco fiber-attachment of representative ruminal cellulolytic bacteria monitored by competitive PCR"Journal of Dairy Science. 86. 1429-1435 (2003)
• [文献書誌] 小林泰男: "新ルーメンの世界"農山漁村文化協会(印刷中). (2004)