研究概要 |
イネ科牧草片(茎)をナイロンバックに封入後、ヒツジルーメン内に浸漬し、植物片上に優先して付着するルーメン菌群を回収した。これらからDNAを抽出し、付着菌群の16SrDNAライブラリーを作成した後、ライブラリー構成員(個々の付着菌)のDNA配列を解読した。データベース上の既知配列と比較し、新規性の高い未同定のものをグループ化すると主に3つの未知グループが特定でき、これらをU1,U2およびU3グループとした。U1はBacteroidesを幅広く網羅する大きな系統群、U2は木材成分分解に関与するとされるClostridium aldrichに近縁なグループ、さらにU3はルーメン内へミセルロース分解菌Eubacterium ruminantiumに近縁なものであった。U2およびU3のみ特異的増幅を保証するプライマーセットを作成でき、これらを両群定量のためのリアルタイムPCR系確立に供した。作成した定量系はいずれも極めて感度が高く(定量下限10-100コピーの16SrDNA)、高精度(測定内および測定間誤差とも10%内外)で、かつ迅速性のあるものであった(PCR開始から計算結果取得まで2-3時間)。このようにルーメンから未だ分離されたことのない2つの菌群の動態を追跡可能な信頼度の高い定量系をはじめて確立した。本定量系を利用して植物片への付着速度や付着量の変遷などを明らかにし、未知菌の付着特性をおさえた。その結果、U2およびU3グループとも、ルーメンに浸漬した稲わらに優先的に付着し、とくに前者はルーメン内最優先繊維分解菌Fibrobacter succinogenesと近似した付着動態を示し、かつ同菌種に次ぐバイオマスを示した。これらの結果はU2グループがルーメン内繊維分解に大きく関与していることを強く示唆するものである。
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