心拍変動(HRV)解析は自律神経活動の指標として様々な動物に応用されているが、牛を用いた実験報告は少ない。そこで、ホルスタイン搾乳牛と黒毛和種の無拘束状態で記録した24時間心電図を用いてHRV解析を行い、自律神経活動推定を推定し、飼育管理ストレスについて考察した。泌乳中期の搾乳牛はタイストールで飼育され、配合飼料は1日6回多回給餌された。黒毛和種繁殖雌牛は、フリーバーンで飼育され、乾草と配合飼料を朝夕2回給餌された。HRVの帯域をLF(0.04〜0.15Hz)、HF(0.15〜1.00Hz)と設定し、心拍数とLFおよびHFパワー、LH/HF(0.15〜1.00Hz)を算出し、自律神経活動を推定した。その結果、搾乳牛は昼夜を通して交感神経活動が優勢に推移し、黒毛和種は搾乳牛に比べて副交感神経活動が優勢であると推察された。HFは副交感神経活動、LFは交感神経活動の指標になること、HRV解析は牛の非侵襲的な自律神経活動推定の有効な方法であることが示唆された。 分娩は肉牛生産・乳牛生産において不可欠なプロセスである。畜産農家にとって、分娩監視は分娩時の母畜への適切な助産や出生子への速やかな処置のため重要な作業であるが、体温の変化や陰部・乳房の変化によっておおよその分娩日を予測することは可能であるが、分娩時刻まで予測することは困難である。昼夜間わず、常時家畜を巡回する時間的な余裕はない。そこで、分娩監視遠隔通報装置を試作し、2頭の妊娠末期の肉牛を用いて装置の性能試験を実施し、分娩開始時から数分おきに遠隔地の携帯電話に通報が鳴り、分娩開始を報せることを確認した。今後、安全かつ簡便な装置を目指して開発に必要な問題点、改良点を抽出した。本研究では実験頭数が少ないため、試作機の性能まで試験することはできなかったが、今後の問題点として、アンテナの改善およびセンサーの装着方法の検討が挙げられた。
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