家畜の生体情報および行動要素を記録する検出部(センサー部)と計測記録・送信部を家畜に装着する。飼育者がデータを収集したい時に、これまで記録した計測記録・送信部のデータを無線方式によりデータ収集器で収集する簡易なシステムを考案した。電波の到達距離は約100mであった。信州大学農学部AFC附属農場繋養の黒毛和種繁殖雌牛にこのシステムを応用して、(1)発情や運動量の指標となる歩数、(2)摂食行動や反芻行動の指標となる顎運動回数、(3)健康状態や発情の指標となる体温(膣温あるいは直腸温)、(4)休息状態の指標となる姿勢(立位、伏臥)を長期間連続記録した。これらの結果から、本計測システムは、舎飼い、屋外、放牧など飼育条件を問わず、家畜の生体情報収集に応用できると考えられた。 一方、ホルスタイン搾乳牛と黒毛和種の無拘束状態で記録した24時間心電図を用いて心拍変動解析(HRV解析)を行い、自律神経活動を推定する方法を検討し、飼育管理ストレスを調べた。その結果、搾乳牛は昼夜を通して交感神経活動が優勢に推移し、黒毛和種は搾乳牛に比べて副交感神経活動が優勢であると推察された。HFは副交感神経活動、LFは交感神経活動の指標になること、HRV解析は牛の非侵襲的な自律神経活動推定の有効な方法であることが示唆された。 また、体温の測定や外陰部およぼ乳房の変化によって凡その分娩日を予測することは可能であるが、分娩時刻まで予測することは困難である。省力管理の観点から、安全、非侵襲、かつ簡便な分娩監視遠隔通報装置を試作し、この装置の今後の開発に必要な問題点、改良点を抽出するとともに、2頭の妊娠末期の肉牛を用いて装置の性能試験を実施した。分娩開始時から数分おきに遠隔地の携帯電話に通報が鳴り、分娩開始を報せることを確認した。
|