研究概要 |
1.1,2-プロパンジオール生成乳酸菌L.buchneriの生体アミン生成能 研究代表者らは有望株としてL.buchneri NK01およびNK02を保有しているが,これらの生体アミン生成能は確認していない.高濃度の生体アミンは採食量や嗜好性を低下させる因子と考えられており,サイレージ中の生成量とその変動要因を明らかにすることは重要である.本実験では,液体培地を用いて生体アミン生成能を確認するとともに,数種サイレージにL.buchneri NK01およびNK02を添加して実際の生成量を測定した.材料は黄熟期のトウモロコシ,出穂初期のフェストロリウムおよびビール粕を主体とするTMRとし,これにL.casei, L.buchneri NK01およびL.buchneri NK02を添加してパウチ式サイレージを調製した.60日後に開封して微生物叢,発酵特性,好気的安定性および生体アミン生成量を調べた. 液体培地を用いたスクリーニングにより,L.buchneri NK01にチラミン生成能が認められた.ヒスタミン,カダベリンおよびプトレシン生成能はいずれの乳酸菌からも認められず,L.caseiおよびL.buchneri NK02はチラミン生成能も示さなかった.L.buchneriの好気的変敗防止機能はすべてのサイレージで認められ,酢酸の増加による酵母数の減少がそれらに関与すると考えられた.生体アミン生成量は無添加サイレージが最も多く,L.casei添加サイレージが最も少なかった.L.buchneri NK01およびNK02添加による違いはほとんどなく,液体培地で確認されたチラミン生成能は実際のサイレージには反映しなかった.これらのことから,L.buchneri NK01とNK02がいずれも安全な微生物製剤となりうることが示されるとともに,生体アミン生成能が変敗防止機能と関係ないことが明らかとなった. 2.L.buchneri添加サイレージの乳牛における利用性 1,2-プロパンジオールは通常のサイレージには含まれない物質であり,L.buchneriの生産面での機能を評価するには大動物での飼養試験が必須である.本実験では,L.buchneri NK02を黄熟期のトウモロコシに添加してサイレージを調製し,これを含むTMRを平均乳量35kg/dの高泌乳牛に給与して,採食量,乳量,乳成分およびルーメン液性状の変化を調べた. L.buchneriの添加により,サイレージ中に13.6g/kgDMの1,2-プロパンジオールが生成した.これを含むTMRを給与しても高泌乳牛の採食量,乳量,乳成分およびルーメン液性状は有意な変化を示さず,L.buchneriは実用的にも有効かつ安全な微生物製剤と考えられた.
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