研究概要 |
L.buchneriの好気的変敗防止機能とその作用機序を調べるとともに,乳牛を用いた泌乳試験を行ってその栄養特性を明らかにした.まず,トウモロコシ,イネ科牧草,TMR(完全混合飼料)を材料としてL.buchneriの添加試験を行い,1,2-プロパンジオール生成量や好気的安定性に関わる要因について解析を行った.同時に,L.buchneriの使用にあたって危惧されることが多いポリアミン生成の有無を確認し,サイレージ用スターターとしての健全性および安全性の評価を行った.さらに,有望株を選抜して実規模調製と乳牛への給与試験を行うとともに,飼料イネホールクロップサイレージの発酵制御にも応用を試みた.得られた結果は以下のとおりである. 1.L.buchneriを添加すると,トウモロコシおよびイネ科牧草サイレージでは,開封後1週間以上好気的変敗が起こらなかった.酵母は検出限界以下となり,乳酸が減少して酢酸と1,2-プロパンジオールが増加した.予乾はL buchneriの効果を減弱させたが,予乾サイレージでも好気的変敗は抑制された.一方,TMRサイレージはL.buchneriを添加しなくても変敗せず,酵母が高レベルで生残しても温度上昇はまったく見られなかった. 2.研究代表者らが保有するL.buchneriは,スクリーニング培地で培養してもポリアミンを生成しなかった.トウモロコシ,フェストロリウムおよびTMRサイレージでもこの特性は裏付けられ,スクリーニングで陰性となったL.buchneriは,サイレージ用スターターとして安全に使用できると考えられた. 3.平成15および16年度にそれぞれ1回ずつ泌乳試験を行い,L.buchneriの有用性を実規模レベルで評価した.L.buchneriによる発酵特性の変化はいずれの実験でも認められたが,小規模サイロに比べると実規模サイロにおける効果は小さかった.L.buchneri添加サイレージを0.40〜0.50の割合で含むTMRを乳牛に給与したところ,採食量,乳量,乳成分およびルーメン液性状は対照飼料と差がなかった. 4.飼料イネサイレージにL.buchneriを添加すると,エタノールと2,3-ブタンジオールの生成が強く抑制された.また,貯蔵12ヶ月後でもL.buchneriは優占菌として生残した.
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