近年、農業高校では、農業に関する専門教育とともに、農業の役割をより幅広く捉えたフィールド教育にも積極的に取り組みつつある。その中でも特に畜産科では、生徒が家畜の飼育管理を行い、家畜に触れながら様々な体験をするという、家畜による動物介在教育を実践している。本調査では、農業高校の教育的効果について、畜産科とその他の学科とを比較することを試みた。調査対象は、広島県立西条農業高等学校の畜産科、生物工学科に所属する1年生から3年生までの生徒とした。生物工学科の生徒は高校附属農場の家畜に触れるという経験をほとんど持っていなかった。調査はマークシートによる選択式アンケートとした。質問は全部で100問とし、生徒の主体性に関する質問群、自尊心に関する質問群、自然観に関する質問群、動物観に関する質問群、農業・畜産観に関する質問群から構成した。動物観及び自尊心の質問群にはそれぞれPAS尺度とRosenberg尺度を参考にした。畜産科の生徒は、農業に対する知識や農業・畜産観、動物観について、生物工学科の生徒と異なる傾向を示した。また、アンケート結果には、学年間においても差が認められた。今後さらに畜産科の生徒に焦点をあて、農場における実習内容を詳細に調査し、教育効果との関連性を明らかにすることが必要であると考えられた。
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